知られざる肥満の恐怖
肥満・体脂肪とは  健康管理ブームのなか、成人病の原因とされている「肥満」。よく耳にする肥満とは、いったいどのようなものなのか。
 肥満とは「体の脂肪組織及び種々の臓器に異常な脂肪が沈着した状態である」と定義されている。体脂肪量は非常に個人差があり、正常でも2〜25%におよぶ幅があり年齢、性別によっても異なってくる。通常、成人男子の体重における脂肪の割合は13〜23%が適正であるとされており、この割合が25%以上になった場合は、肥満状態と考えられる。成人女性では17〜27%が適正、30%以上が肥満とされている。
つまり、体重が多いからといって必ずしも肥満ではなく、また標準体重と同じ体重であっても肥満という現象が起こるのである。これがいわゆる「かくれ肥満」である。
そこで、肥満の判定が必要になってくる。一般には標準体重と比較する方法がとられている。
肥満の判定

 肥満を判定する方法として、いくつかの方法がある。
 ひとつは、キャリバーと呼ばれる器具で特定部位(上腕の後ろと肩胛骨の下が安定した結果が得られる)の皮下脂肪厚をつまんで計測する。この計測された皮下脂肪厚を回帰方程式に当てはめて体密度を算出し、さらに体脂肪率算出式に代入して各人の体脂肪率を求めるのである。
 ふたつめは、標準体重から判定する方法。これには、《1》「ブローカ式桂変法」と《2》「ローレル指数」という方法がある。
《1》は、身長から100を引き0・9を掛けるもの。±10%なら正常、+10%超体重過多、+20%超で肥満と定義される。
《2》2の方法は体重を身長の三乗で除して算出する。110〜115で正常、150以上は肥満傾向、200以上になると肥満とされる。
 3つめは、BMI(体格指数)と呼ばれる計算式から判定するもの。体重を身長の二乗で除す。日本肥満学会の基準ではBMI25以上が肥満とされている。

遺伝要因が大きなウェイトを占める  なんと肥満は遺伝するのである。
 両親が肥満の場合、約70%が、片親の場合でも40〜50%の子供が肥満になると言われている。米国・ペンシルバニア大学の肥満研究者が1974組の一卵性双生児と2097組の二卵性双生児を調査したところ、肥満の一致率は一卵性の方が2倍も高いことが分かった。これは、肥満に遺伝素因が大きな要素を含んでいることを示すものとして注目を浴びている。
肥満の種類  肥満は脂肪の付いている場所で、「りんご型肥満(上半身型肥満)」と言われるタイプと「洋なし型肥満(下半身型肥満)」と言われるタイプに分類される。
 「りんご型肥満」は、内臓脂肪型肥満とも言われ、内臓周辺に脂肪がついており、生活習慣病との関わりが大きいと言われている。中年太りでお腹が出ているタイプで、男性に多く、更年期以降の女性にも見られる。また、このタイプは糖尿病・高血症・高脂血症が合併することが多く、心筋梗塞・脳卒中を起こす確率も高くなる。ウエスト/ヒップ比が男性なら0・9以上、女性で0・85以上がりんご型肥満の目安である。
反対に「洋なし型肥満」は、皮下脂肪型肥満とも呼ばれる。こちらは皮膚の下に集中して脂肪が付くタイプで、お尻・太股・下腹部がふっくらしていて若い女性に多い。皮下脂肪は内臓脂肪よりも落としにくいとされている。
肥満のメカニズム  脂肪細胞には2種類ある。わきの下の中の部分や腎周囲などに多く見られる「褐色脂肪細胞」と、「白色脂肪細胞」である。
「褐色脂肪細胞」と呼ばれるものは、脂肪が複雑な代謝経路を通らずに直接消費されるため、自由にエネルギーを放出し、カロリーが消費される。つまりカロリー消費が多ければ脂肪の蓄積は抑制されるということ。しかし、この褐色脂肪細胞の減少や機能障害、活発に働かせるためのアドレナリン受容体の異常でも肥満が起こることが明らかになっている。
 「白色脂肪細胞」は簡単に言えば脂肪を蓄積するタイプの細胞である。妊娠末期に妊婦が炭水化物を主とした過剰な栄養素を摂取すると、胎児の脂肪細胞として白色細胞数が増加。さらに生後1年の乳児が過剰エネルギーを摂取するとやはり白色脂肪細胞数が増える。このような増殖型肥満が小児期に発生、成人肥満になるときには脂肪細胞のサイズも大きくなり、重症の肥満になりやすいのである。
さらに、食欲調整機構が乱れ過食に陥ると肥満が起こる。その原因として視床下部付近の腫瘍がみられる。また、ストレスが加わると満腹中枢に何らかの影響をきたし過食に陥ることも様々な研究から報告されている。
肥満度を測る  健康志向の高まりと同時に普及している「体脂肪計」であるが、どのような仕組みになっているのか。
 体の中の脂肪はほとんど電気を通さない。一方、筋肉や血液などは、水分やタンパク質を一定の割合で含んでいるため電気を通す。このことを利用して、人体に影響のない程度の電流を流し、電気抵抗の強さから体脂肪率を計算しているのである。
 最近では様々な体脂肪計が売られている。手で測るもの、体重計のように上に乗って測るものなどがあり、それぞれに計測値に差が出る。そこで重要なのが、体脂肪率を測る基本は「同じ計器」「同じ時間・健康状態」「正しい姿勢」である。会社の健康診断時の体脂肪率と家での体脂肪率が違うのは当たり前。さらに、体内の水分量は変化するため、朝と夜でも計測値が違ってくる。使用している計測器の説明書等を参考にするとよい。
予防と治療  まずは、生活習慣を改善すること。食生活が重要なポイントとなってくる。消費される以上のカロリーを摂取するために体脂肪が増えることを考えれば、食事の取り方、内容にも気を付けることが大切である。しかし、闇雲に食事の量を減らせばいいというものではない。世間には多種多様なダイエット食品やダイエット方法があるが、中には体脂肪を減らすためのダイエットが反対に体脂肪を増やしてしまった、などというものもある。
 食事療法と同時に大事なのが運動である。「分かり切っていることだ」と思う人も多いだろうが、内臓脂肪は運動で減りやすいため、大切なことなのだ。短距離走のような無酸素運動は筋力を増し、ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪を燃やすと言われている。今まであまり運動をしていなかった人は、急激に運動するのではなく、軽いストレッチなどから徐々に運動をするようにしていくと良い。
運動はいいとしても、お酒好きには食生活改善というのは気になる話。酒類はカロリーも高く、食欲も増進させるため、肥満の大敵である。太らないためには、ビール中瓶1本くらいと豆腐などの高タンパク・低カロリーのおつまみで止めておくのが賢明かもしれない。
女性のダイエット  女性誌などで頻繁に取り上げられる「ダイエット」。無理なダイエットのために「貧血」「生理不順・無月経」「栄養失調」「骨粗鬆症」を引き起こし体調を崩す人が多いのだそうだ。
 きれいになりたい、スリムになりたい、という一心で自己流または何々しか食べないなどのダイエットは、かえって顔色が悪くさらには体脂肪率が増えてしまうという希望とは反対の結果を招くことになる。
男性とは違い、女性の身体はデリケート。ホルモンのバランスを考え、美しくなりたいものである。自分の身体を痛めつけるようなダイエットは、考え直さなければならない。
肥満人口と飢餓人口  日本やアメリカをはじめとする先進諸国では、年々「肥満」人口が増加してる。食生活が豊かになりいわゆる「飽食の時代」である。
 対照的に発展途上国では食べる物がなく慢性的な栄養不足、さらには毎年たくさんの子供たちが次々と亡くなっている。何年か後には肥満人口が飢餓人口を上回ってしまうという調査結果もある。
 ひとつの地球上にこのような対照的な現象が起きている事も現実なのだ。
 自分の生活を見直して見る事も大事なのかもしれない。

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